レギュラトリーリライアンスの価値に関する世界の薬事規制当局からの共同声明

背景

急速に進歩する医療技術のグローバル化に伴い、各国規制当局(National Regulatory Authorities; NRAs)は、世界中の患者が安全で高品質な医薬品に早期にアクセスできるよう共同で取り組んでいくことが求められる。

国際活動における重要な取り組みの1つは、レギュラトリーリライアンスである。レギュラトリーリライアンスとは、規制当局のキャパシティを強化し、国内及び国際的な保健制度を改善し、医薬品の安定供給を拡大させ、経済的リソースを節約し、人的リソースをより戦略的に利用するメカニズムである。

WHOもまたレギュラトリーリライアンス[i][ii]を支持し、次のように定義している。「リライアンスとは、ある地域のNRAが自身の決定を下す際、他の規制当局や信頼できる機関が実施した評価、もしくは他の信頼できる情報を考慮に入れ、重要な意思決定をする行動のことである。リライアンスを利用する当局は独立性を保ち、下した決断がたとえ他者の決定や情報に依拠するものであっても、それに対して説明責任を持つことになる。」[iii]

リライアンスは、規制当局間の信頼に基づき構築され、一方向又は双方向になり得る。この観点では、製品の品質を保証し、良好なベネフィット・リスクプロファイルを実証する堅牢な科学的エビデンスを考慮して、NRAが規制上の意思決定を確実に行うことで、リライアンスは強化できる。

リライアンスは、審査報告書や査察結果報告書、又は科学的見解などの規制情報を共有するために、規制当局又は機関の間での直接的な協働を必要とすることがある。守秘義務に係る規約又は合意書などの正式なツールが、リライアンスを支援するために利用される。

国際的適合性と主要原則

規制プロセスは、リライアンスによって、最適化とともに取り組みの重複の最小化が可能となる。さらに、科学的専門知識が活用されることで、より有用で堅牢な意思決定につながり、規制当局のキャパシティが強化される。その結果として、リライアンスは、NRAのリソースの効率的な配分も可能にし、医薬品へのアクセスを向上させ得る。

COVID-19のパンデミックは、リライアンスの重要要素である規制協力と情報共有の重要性を際立たせることとなった。ICMRAは、公衆衛生の緊急事態下にとられた多くの規制活動の対応を合理化し取り組みを促進するといった、リライアンスの関係性を重視している。例えば、ICMRAは、ワークショップで合意された共通の取り組みに関する報告書を公開したり、SARS-CoV-2ワクチン候補と治療薬の開発に関する規制上の考慮事項をメンバー間で議論したりしている。

ICMRAは、各NRAが各国の状況に適したリライアンスのレベルとアプローチを決定し、レギュラトリーリライアンスの適用は、全般的な原則に従うべきであると認識している。この原則は、リライアンスが成熟度やリソースに関わらず全てのNRAに適用されるため、意思決定上の主権、プロセス及び基準の透明性、成果物と活動の一貫性、国レベルでの手順と権限の合法性、関係する全てのステークホルダーの適格性、普遍性等を示す。リライアンスは重要な役割を持つ仕組みではあるが、NRAの専門性が継続的に発展することの重要性に取って代わるべきではない。

ステークホルダーへの要請

ICMRAは、規制戦略としてリライアンスを支持することを表明する。また、医薬品が良好なベネフィット・リスクプロファイルと保証された品質を持つことを確実にしつつ、利用可能なリソースを最大限活用するために、リライアンスの最適な活用方法が導入されるよう、薬事規制当局と協働することを約束する。ICMRAは、リライアンスを効率的に使用するための協力と関与をステークホルダーに要請する。

  • ICMRAはNRAに、次の事項を求める;継続的な規制能力の評価;明確で透明性のある意思決定プロセスの確立;国際調和と規制収束への参加;国際規制協働及び協力の発展への参画;規制能力強化のための取り組みに関する情報の他NRAとの共有;リライアンスを採用するための努力。これらの取り組みは堅牢で効率的な規制システムの構築をもたらし、その結果、さらなる信頼醸成が可能となる。
  • ICMRAはWHOに、次の事項を求める;NRAへの技術的な支援の提供;世界のNRAからの情報収集とリライアンスの対象範囲の模索;世界的な医薬品分配への支援;リライアンスの実施を促進するための規制ツールやガイダンス文書、ベンチマーキングの提供;NRA評価の枠組みの確立と維持及び規制当局の実績評価。
  • ICMRAは医薬品業界に、次の事項を求める;法的及び技術的要件の順守;製品の品質一貫性、及び各NRAに提出する書類の完全性の保証。リライアンスや、透明性のある協力を通した規制プロセスの効率化は、製薬企業にもベネフィットをもたらす。
     

我々は皆、世界の保健規制に資する強固なリライアンスシステムを構築する役割を担っている。そのためにICMRA[iv]は、NRA間の継続的な協力を奨励し、良好なベネフィット・リスクプロファイルを持った高品質な医薬品への迅速なアクセスを可能にするというレギュラトリーリライアンスのベネフィットを強調する。

 

[i] WHO, 2020. Draft Good Reliance Practices in regulatory decision-making for medical products: high-level principles and considerations. Working document QAS/20.851/Rev.1. https://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/quality_assurance/QAS20_851_Rev_1_Good_Reliance_Practices.pdf
[ii] PAHO/WHO, 2019. Regulatory Reliance Principles: Concept Note and Recommendations. http://iris.paho.org/xmlui/bitstream/handle/123456789/51549/PAHOHSS19003_eng.pdf?sequence=1&isAllowed=y
[iii] WHO, 2020. Draft Good regulatory practices for regulatory oversight of medical products. Working document QAS/16.686/Rev.3  https://www.who.int/medicines/areas/quality_safety/quality_assurance/QAS16_686_rev_3_good_regulatory_practices_medical_products.pdf
[iv] ICMRAは世界各地域の主要な規制当局からなる国際的な長官レベルの会合である。本会合は、医薬品規制当局に対して世界的な戦略的フォーカスを提供し、共有された規制上の事案及び課題に対して戦略的リーダーシップを与える。優先事項には、危機的状況に対する協調的な対応を含む。参加規制当局は以下の通り:Therapeutic Goods Administration (TGA), Australia; National Health Surveillance (ANVISA), Brazil; Health Products and Food Branch, Health Canada (HPFB-HC), Canada; China National Medical Products Administration (NMPA), China; European Medicines Agency (EMA) and European Commission - Directorate General for Health and Food Safety (DG - SANTE), European Union; French National Agency for Medicines and Health Products Safety (ANSM), France; Paul-Ehrlich-Institute (PEI), Germany; Health Product Regulatory Authority (HPRA), Ireland; Italian Medicines Agency (AIFA), Italy; Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) and Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA), Japan; Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), Korea; Federal Commission for the Protection against Sanitary Risks (COFEPRIS), Mexico; Medicines Evaluation Board (MEB), Netherlands; Medsafe, Clinical Leadership, Protection & Regulation, Ministry of Health, New Zealand; National Agency for Food Drug Administration and Control (NAFDAC), Nigeria; Health Sciences Authority (HSA), Singapore; Medicines Control Council (MCC), South Africa; Medical Products Agency, Sweden; Swissmedic, Switzerland; Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency (MHRA), United Kingdom; Food and Drug Administration (FDA), United States and the World Health Organization as an observer. Associate members include Austrian Medicines and Medical Devices Agency (AGES), Danish Medicines Agency, Israel Office of Medical Technology, Health Information and Research (MTHIR), Poland Office of Registration of Medicinal Products and Biocidal Products (URPLWMiPB), Russia Roszdravnadzor and Spain Agencia Española de Medicametos y Productos Sanitarios (AEMPS).