ワクチンの臨床試験継続に関するステートメント
我々ICMRA(薬事規制当局国際連携組織)のメンバーは、承認されたワクチンの品質・安全性・有効性を保証し、国民に利用可能とする国際的な取り組みを支援する上で、重要な役割を担っている。我々は、(COVID-19を引き起こす)SARS-CoV2に対するワクチンの開発及び評価を促進するための国際協働を強化している。
規制措置及び展開の根拠となる臨床成績を収集するためのCOVID-19ワクチンの臨床試験継続を支持する本ステートメントは、全てのステークホルダー、ワクチン接種者、研究者及び臨床試験担当医師、アカデミア、規制当局、製薬業界を対象としている。
今回のパンデミックは、重大で世界的に未解決な公衆衛生及び経済的危機であり、時が経つにつれ、様々な箇所で、伝播、罹患率、死亡率のピークを迎えており、制御されている状態にはまだ程遠い。安全で有効なワクチンが利用可能になることは、全般的な緊急時対応における重要な要素であり、平常への復帰に寄与すると見込まれている。
規制当局は、提出された臨床試験結果の迅速な解析を促すために、柔軟で機敏な手順を設定している。このような解析は、明確で、独立性があり、透明性のあるベネフィット-リスク評価を裏付け、結果として安全で有効なCOVID-19ワクチンの承認や早期アクセスにつながる。
ワクチンのベネフィットが潜在的なリスクを上回ることを判断するため、規制当局は、安全性及び有効性に関して、適切にデザインされたランダム化比較試験等による頑健で説得力のあるエビデンスを必要としている。規制措置を裏付けるワクチンの安全性及び有効性に関する最初のポジティブなエビデンスは、臨床試験において事前に規定されたCOVID-19症例数が発症した際の計画的な中間解析又は最終解析に基づくものであろう。このような状況では、中間解析や最終解析の終了後も長期にわたってワクチンの安全性及び有効性に関するデータ収集を継続することが最も重要となる。
特に、規制上の判断後の治験参加者を継続的なフォローアップすることにより、重症例に対する効果や重要なサブグループに対する効果、ワクチン誘発性の疾患増悪の潜在的リスク、COVID-19防御効果の持続性等、SARS-CoV-2疾患もしくは感染の特定の状況における長期の安全性及び有効性に関する重要かつより精度の高い追加情報が得られるだろう。
すなわち、臨床試験におけるワクチン投与群とワクチン非投与(COVID-19に対するワクチンを投与されなかった対照被験者)群の評価を可能な限り長期にわたり継続することで、非常に重要な情報が得られるだろう。
これらの理由から、臨床試験担当医師とスポンサーは、いかなる規制当局に承認された後でも、試験の継続中及び最終解析終了後に実施される予め計画された解析により、ワクチン投与群と対照群のフォローアップを可能な限り長く継続することを担保する開発戦略を立てるべきである。
それゆえに、あるワクチンが承認されたのちに、被験者をランダム化した投与群(ワクチン投与群と対照群)の持続することが明らかに不可能でなければ、当初の計画通りに臨床試験を実行し、決められた投与が完了してから少なくとも1年以上のフォローアップを行うことを推奨する。この推奨を作成するにあたって、1年以上のフォローアップを行う群を持続できる可能性は、臨床試験に組み込まれる集団の特徴(例えば、若年層で健康である、重篤なCOVID-19に進行する素因を有する等)、被験者が十分な情報を得たうえで自ら決定した意思、COVID-19ワクチンの入手可能性、SARS-CoV-2の感染拡大状況などの要素に依存すると認識している。スポンサー、臨床試験担当医師、公衆衛生当局および規制当局は、発生しうる状況をひとつひとつ評価することが必要である。