医療従事者向けステートメント:COVID-19ワクチンの安全性及び有効性に関する規制方法 (2021年6月11日改訂)
本和訳は英語が正文であり、あくまでも参考訳です。齟齬がある場合には英語が優先します。
薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)と世界保健機関(WHO)の共同ステートメント
COVID-19に対するワクチン接種について患者と話し合う上で、医療従事者及び公衆衛生当局は中心的な役割を担います。ワクチンは、感染症による死亡や入院の予防に重要な役割を果たします。有効性に関する新たなデータは、承認されたCOVID-19ワクチンがこの疾患の蔓延の抑制に寄与していることを示しています。広範なワクチン接種が達成されるまで、ワクチン接種を受けた人も受けていない人も、パンデミックを局所的に抑えるために必要なさらなる防御行動を意識する必要があります。
世界的なCOVID-19パンデミックの影響により、ワクチンに対して一般市民の関心がかつてないほど高まっています。具体的に注目されているのはワクチンの開発や規制当局による審査、安全性監視などです。ワクチンに関する報道の多くは、マスコミやソーシャルメディアによって行われてきました。 有害事象(副反応)の報告を受け、ワクチン接種を受けることに対する不安を口にしたり、ワクチン接種を受けることを遅らせたり、さらにはワクチン接種に対して強く反対する人もでてきました。 国の安全性監視システムに対する個人の信頼にも差があります。COVID-19ワクチン接種の重要性を伝える上でのもう1つの課題は、若年成人では一般的にCOVID-19感染による臨床的な影響が少ないため、ワクチンが伝染を予防することや、変異型に対して有効であることがさらなるデータによって確認されるなどするまで、彼らはワクチン接種を受けることに限定的な価値しかないとみなしていると考えられることです。従って、ワクチン接種の選択を支援するためには、明確で一貫性のある情報提供が不可欠です。
ICMRAとWHOは、COVID-19ワクチンの開発、規制当局による審査、及び継続的な安全性監視に関して、医療従事者、その関係者及び患者がさまざまな疑問を抱えていることを承知しています。
目的
薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)*と世界保健機関(WHO)の本共同ステートメントは、医療従事者がCOVID-19ワクチンの監視における規制当局の役割についての質問に答えられるよう支援することを目的としています。本ステートメントでは、ワクチンの安全性、有効性、及び品質を判定するための厳格な科学的評価がどのように行われるのか、そして、承認後においても安全性をどのように厳密に監視し続けるかについて説明します。
ワクチン接種は、COVID-19による死亡や重症疾患の減少及びCOVID-19の伝播の減少に寄与することが示されています。そのため、できるだけ多くの人にワクチンを接種し、病気の拡大を抑えることが重要です。 かなりの割合の国民にワクチンを接種することで、脆弱な人(ワクチン接種を受けることができない人など)や、少ない割合ではあるもののワクチン接種後も感染のリスクがあるかもしれない人も保護されます。広範なワクチン接種ができなければ、ウイルスは引き続き蔓延し、変異型が発生してしまいます。中にはより大きなリスクをもたらす変異型も発生すると考えられます。広範なワクチン接種は、人々が病院に行かざるを得ない状況になることを防ぎ、病気になる人を減少させ、最終的には医療制度におけるCOVID-19の負担を軽減します。また、正常な社会的機能への復帰や経済の再開も可能にします。
ワクチンと規制プロセス
規制当局によるCOVID-19ワクチンの評価方法
規制当局は、ワクチン製造業者が提供する科学的及び臨床的エビデンスを厳密に評価しています。ワクチン製造業者は、提供するデータについて規定された基準に従うことが法的に義務づけられており、ワクチン製造業者が行う臨床研究及び製造業務は規制当局の監視の対象となります。ワクチンの評価後に、臨床試験の完全なデータ又は要約データのいずれかが入手可能となります。それぞれのワクチンは、安全性、有効性、品質が十分に評価され、使用が承認されるか否かが決まります。規制当局は、ワクチン候補のベネフィットとリスクを評価するために、前臨床研究、臨床試験及び製造情報から入手できる科学的エビデンスを用います。
規制当局は、ワクチンを承認するか否かの決定を通知できるよう独立した科学諮問委員会の専門家にさらなる助言を求める場合があります。これらの委員会は、科学、医学(感染症を含む)、公衆衛生の専門家で構成され、多くの場合、消費者や医療従事者の代表者も含まれます。
公衆衛生機関は、規制当局とは異なる役割を担っています。公衆衛生機関は、多くの場合、専門的な予防接種技術諮問委員会と協力して、予防接種プログラムの開発と実施を行います。具体的には、特定のワクチンを接種する集団の優先順位付けと指定、追加的な勧告の発表、ワクチンと予防接種に関するより広範な情報の提供などを行います。また、規制当局と協力して、使用が承認された後のワクチンの安全性監視も実施されます。
世界的に見て、より幅広い集団を対象としたワクチン使用を承認する前には、ワクチンの安全性、有効性及び品質を科学的に評価するための厳密なプロセスが適用されており、一般市民はこれを信頼できる状況にあります。
規制当局による承認前の安全性のエビデンス:
安全性のエビデンスは、COVID-19ワクチンの各規制当局への承認申請において不可欠な要素です。安全性のエビデンスは、ワクチン開発プロセスの全段階で収集されます。臨床試験では安全性の厳格な評価が実施され、評価結果が承認プロセスの一環として審査のために規制当局に提出されます。
製造販売承認を得るための規制当局への承認申請書類の中で、すべての有害事象の調査及び報告が行われる必要があります。通常、規制当局は、臨床試験の参加者に対して、ワクチンの最終接種後少なくとも1~2ヵ月間にわたる追跡調査が行われることを必要としています。 一般的に、ワクチンに関する過去の経験から、ほとんどの有害事象はこの時間枠内で発現します。ただし、まれな有害事象は、広範な集団での使用後まで認められないこともあります。各ワクチンの早期フェーズの臨床試験に参加した被験者については、より長期(例えば6~12ヵ月以上)の追跡調査も行われます。また、多くの被験者を対象に少なくとも1年間の追跡調査を実施して、個々のワクチンの予防効果の持続期間及び長期安全性を評価し、これらの長期試験から得られた安全性データを承認後の安全性監視の一環として規制当局が入念に審査します。
有効性:
ワクチンによって誘発される免疫反応の種類に関する情報とは別に、企業は適切にデザインされた臨床試験のデータを規制当局に提出し、ワクチンがCOVID-19を予防することを示さなければなりません。データでは、ワクチンの有効性を正確に測定できるようワクチン接種を受ける十分な数の被験者が臨床試験に組み入れられたことが示されました(対照群の被験者に加えて、ワクチン接種を受ける被験者は一般的に10,000人以上、通常は15,000人以上)。臨床試験の集団には、さまざまな年齢層と併存疾患を有する患者が含まれている必要があります。COVID-19が高齢者に及ぼす深刻な影響を考慮し、COVID-19ワクチンの臨床試験には多数の高齢者を組み入れています。
新しいワクチン候補の臨床試験では、臨床検査で確認されたSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染数を減少させることにより、ワクチンを接種した人ではワクチンを接種しなかった対照群と比較してCOVID-19の発症が極めて有意に減少したことが示されました。
品質:
規制当局の承認を受けたCOVID-19ワクチンは、国際的に合意された厳格な規制基準である医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)に従って製造しなければなりません。規制当局は、データを審査し、各製造所の製造工程が適切に管理され、一貫していることを確認します。対象のデータには、ワクチンの組成、純度、力価に関するデータの他、各バッチのワクチンが常に高品質であることを保証するために用いられる各製造段階及び管理に関するデータが含まれます。ワクチンの安定性に関するデータも、ワクチンの承認前に提供しなければなりません。承認後、バッチが国の要件が満たしていることを保証するために、供給前に各規制当局がバッチを評価することもあります。
ワクチン承認後の安全性及び有効性の監視:
ワクチンの使用が承認された後は、規制当局は厳格な有効性監視、並びに安全性の監視及びリスク最小化活動を実施します(ファーマコビジランス)。規制当局は、ワクチンのベネフィットが常にリスクを上回ることを保証するため、ワクチンの安全性を継続的に監視する必要があります。規制当局は以下のアプローチを用いてこの監視を行います。
- 医療従事者や消費者から報告された有害事象の評価と分析を行うとともに、ワクチンの製造販売業者(「治験依頼者」とも呼ばれる)に対して国内外で入手した有害事象について規制当局に報告することを求めます。
- 多くの規制当局は強化された受動的な監視システムを導入する予定です。これらのシステムには、ワクチンに関して報告された疑われる副反応の数を偶然起こり得る事象の数と迅速に比較するシステムや、さまざまな状況でのワクチンの使用に関するリアルタイムに近いデータへのアクセスなどが含まれます。いくつかの規制当局は、異なるワクチンのブランド及びバッチごとのトレーサビリティシステムも導入しました。
- リスクを軽減するための迅速な措置を講じるとともに、国際的な協力を通じて規制当局及び研究者間で共有される新たな安全性の問題に関する情報も考慮します。
- 新たな安全性情報に関する医学文献及びその他の情報を確認します。
- ワクチン製造業者に進行中の自社製品の臨床試験から安全性監視を継続するよう求めます。
- 多くの規制当局は、ワクチン製造業者に対し、自社のワクチンに関連するさらなる疫学調査を含め、リスクを監視し最小化する方法を記載したリスク管理計画を作成することも要求しています。
医療従事者は、患者に認められた有害事象を積極的に報告するだけでなく、規制当局が一般市民からの直接報告を受け入れている国では、ワクチン接種者に対して医療従事者、又は医薬品規制当局に直ちに有害事象を報告するよう促すことが非常に重要です。関連するすべての事象を報告することは、規制当局がワクチンの有害事象を引き起こす可能性を評価し、新たに導入されたワクチンに関連する安全性の問題を特定するのに役立ちます。
ワクチンに関する安全性監視及び疑われるすべての副反応に関する報告の評価の一環として、規制当局は「特に注目すべき有害事象」のリストを作成しました。これらのリストには、ワクチンとの関連性が指摘されている事象も含まれます(アナフィラキシーなど)。これらのリストには、ワクチンとの関連性が指摘されていない事象も含まれていますが、これらは特定のワクチンとの因果関係を示すエビデンスはなくても、極めて注意深い監視を行うことが重要な重篤な事象であるためです。ワクチン接種を受けていない人において予想されるこれらの事象の自然発生率に関する情報を把握することで、規制当局がこれらの事象の報告の増加に速やかに気づき、徹底的な調査を行えるようになります。
高齢者や基礎疾患を有する患者を対象としたCOVID-19ワクチンの広範な使用は、残念なことにワクチン接種とは無関係の単なる偶発的な死亡や重篤な疾患が生じることを意味します。 各規制当局の任務は、関連する医療専門家とワクチン製造業者とともに、因果関係を判定することです。妊婦、重度の基礎疾患を有する人、高齢者、小児、他の疾患を予防するためのワクチン接種を受けた人を含む一部の集団に対しては特に重点的に安全性監視を行う予定です。
規制当局は、安全性の問題が特定された場合、多くの場合、公衆衛生当局と連携して強力な措置を講じることができます。 これらの措置には、患者、医療従事者及び地域社会に対する安全性情報の提供、ワクチンに関する製品情報や消費者向け情報の更新、特定バッチのワクチンの流通停止、地域の特定集団に対するワクチン承認の制限又は承認の取消し等の規制措置を講じることが含まれます。
報告頻度の高い有害事象
COVID-19ワクチンに関して最もよく報告されている事象は、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛、発熱、悪寒、注射部位疼痛など、ワクチンの予測される副反応です。これらの有害事象の発現は、臨床試験で既に知られているワクチンの知見と一致しています。
特に注目すべき有害事象
規制当局は、ワクチンの既知及び潜在的ベネフィットが、その既知及び潜在的リスクを上回ると判断した場合にのみ、ワクチンの承認を決定し、維持します。
アナフィラキシーは、どのワクチンでも起こり得る非常にまれな副反応です。その他、顔面まひ、けいれん発作、味覚消失又は嗅覚消失、心イベントなどの有害事象が報告されていますが、ワクチンとの因果関係が確認されたものはありません。
mRNAワクチン
mRNAワクチン(ファイザー製及びモデルナ製のワクチンを含む)について報告された特に注目すべき主な有害事象はアナフィラキシーです。規制当局はアナフィラキシーの可能性があるとされる報告を慎重に評価し、それらが本当にアナフィラキシーであるか否かを判断し、ワクチンによって引き起こされた可能性があるか否かを判断します。アナフィラキシーが報告されるのは依然として極めてまれです(ワクチン接種を受けた100万人当たり10人ほど)。
生じる危険性があるアナフィラキシーの管理に関するガイダンスは、これらのワクチンの製品情報/製品ラベルに記載されています。通常のワクチン接種手順には、ワクチン接種後15分間以上は接種者を観察下におき、アナフィラキシーを速やかに管理できるよう適切に医学的措置の準備をしておくことが含まれています。何らかのワクチン成分に対して重度のアレルギー反応の既往歴がある人にはこれらのワクチンを接種するべきではありません。初回接種時にアナフィラキシーが認められた患者には、2回目のmRNAワクチンを投与するべきではありません。
その他には、異常出血、顔面まひ、けいれん発作、味覚消失又は嗅覚消失、心イベントなどの有害事象が報告されています。規制当局は、ワクチンとこれらの有害事象との間に因果関係があるか否かを監視し、慎重に評価します。適切であれば、これらの有害事象は、該当するワクチンの製品情報/製品ラベルに記載されます。全体的として、現在のエビデンスは因果関係を示唆していません。
アデノウイルスベクターワクチン
アデノウイルスベクターワクチンには、アストラゼネカ、ヤンセン、国立ガマレヤ研究所、カンシノ・バイオロジクスのワクチンが含まれます。国際的に、アストラゼネカとヤンセンのCOVID-19ワクチンは、血小板減少症(血小板数低値)を伴う血栓塞栓症(血栓症)が関わる極めてまれな血栓症との関連が指摘されています。この病態は、血小板減少を伴う血栓症(TTS)と呼ばれています。このリスクの特徴をさらに明らかにし、この症候群をより理解するため、医薬品規制当局は定期的に会合を開き、症例に関する情報を共有しています。国立ガマレヤ研究所製ワクチン及びカンシノ・バイオロジクス製ワクチン接種後の有害事象に関する国際的な情報は限られています。
血小板減少症を伴わない静脈又は動脈内の血栓(静脈血栓症又は静脈血栓塞栓症を含む)の全体的な報告数は、ほとんどの国でより一般的な種類の血栓に関して予想される自然発生率を上回ってはいません。
血小板減少症を伴う血栓塞栓性事象の自発報告率は国によって異なるため、正確な発現率を推定することは困難ですが、アストラゼネカ製ワクチンに関しては、欧州及び英国で相当量が使用されていることからみても、このような事象が発現するのは極めてまれです。現在利用できる推定値は、ワクチン接種者100万人あたり10~15人となっています(一部の国では、この推定値は確定症例数ではなく、TTSが疑われる症例の報告数に基づいていることに留意)。米国では、ヤンセン製ワクチンについても血小板減少症を伴う血栓塞栓性事象の報告があり、その発現率は接種100万回あたり約2~3件となっています。各国の規制当局はこの問題を継続的に注意深く監視し、報告された症例数及び最新の推定発生率に関する最新情報を公表しています。
ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓塞栓症の症例は、主に高齢者より若年者で報告されました。この報告と、COVID-19に伴う重篤な疾患又は死亡のリスクは中年以上の人ではるかに高いという現状を受け、一部の国の公衆衛生当局はアストラゼネカ製ワクチンの接種を若年者に対して開始しないことを推奨しています。
TTSは特別な管理を必要とするため、ワクチン接種後の凝固障害だけでなく、血栓塞栓症及び血小板減少症の兆候と症状について医療従事者は注意する必要があります。ワクチン接種者に対して、主にワクチン接種後4~20日以内に起きる重度又は持続性の頭痛、霧視、息切れ、胸痛、下肢腫脹、持続性の腹痛又は異常な皮膚の内出血や点状出血(皮膚の小さな紫色、赤色又は褐色の斑点)などの症状がみられた場合は、直ちに治療を受けるよう指示しなければなりません。ただし、ワクチン接種後20日を過ぎてから報告される症例もあります。この情報は、規制当局によって承認されたワクチンの製品情報/製品ラベルに記載されています。
COVID-19ワクチンに関するQ&A
Q:ワクチンはどのような方法で非常に迅速に開発されているのでしょうか? その結果として、ワクチンの安全性と有効性が損なわれていないでしょうか?
A:COVID-19ワクチンの開発はいくつかの理由からかつてないスピードで行われていますが、ワクチンの安全性及び有効性の要件は損なわれていません。ワクチン開発が促進されたのは以下に示す理由によるものです。
- 他のワクチンの開発からの新技術の応用-mRNAワクチンは、COVID-19ウイルスの配列が決定されてから極めて迅速にCOVID-19に対して開発されましたが、基礎となる技術はかなり前から開発されていたため、非常に迅速に生産をスケールアップすることができました。アデノウイルスベクターワクチンに使用するアデノウイルス技術は、そもそもこの20年間にSARS、MERS、エボラウイルスに対して試験が実施されていたため、これらのウイルスといくつかの類似性を有するCOVID-19に迅速に適応させることができました。
- 臨床試験の成功-多数のボランティアを速やかに募集して臨床試験に組み込むことができました。不幸にも一部の国では感染率が高かったこともあり、10,000~50,000人を対象とした試験を短期間で完了することができました。通常であれば、ワクチンが有効か否かを判定するためにこの規模の試験を実施するには数ヵ月又は数年かかることもあります。
- 非常に密接な協力-規制当局、業界、臨床研究者間の非常に密接な協力により、規制要件の明示と結果の早期入手が可能になりました。
- 集中的で洞察に満ちた研究-研究者らは、ウイルス上の「スパイクタンパク質」がワクチン開発の適切な標的になると予測し、ほぼすべてのワクチンがこのタンパク質に対する反応を誘発するように設計されています。 これまでのところ、スパイクタンパク質はワクチン接種者で強力な免疫反応を引き起こしており、臨床成績が報告されているワクチンではCOVID-19に対する高い防御能が認められています。
- 大規模な資金提供-政府、業界、慈善団体がワクチン開発への大規模な資金提供を行い、ワクチンの開発及び製造のためのグローバルな研究及び商業インフラの多くを方向転換しました。各国政府はまた、企業が規制当局の承認よりも先に、ワクチンの在庫を製造する商業的リスクを取ることができるようにしました。
Q:mRNAワクチンはワクチン接種者のDNAに影響を及ぼしますか?
A:いいえ。ワクチンに含まれているmRNAはワクチン接種者の遺伝子に組み込まれることはなく、ワクチン接種後数週間で分解されることが分かっています。mRNAワクチンには、細胞に対して、mRNAの内容を読み取り、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のコピーを生成するための内容だけが組み込まれています。このスパイクタンパク質によって、後にウイルスに曝露された際に、ワクチン接種者の自然免疫系が反応を引き起こすことができます。
Q:COVID-19ワクチン接種によって免疫を獲得した人はどのくらいの期間にわたって防御されるのでしょうか?
A:これらのどのワクチンについても、防御がどのくらいの期間持続するかはまだわかっていません。 今後の12ヵ月間でより明らかになるでしょう。
- 防御期間はワクチンによって異なる可能性があります。例えば、季節性インフルエンザワクチンは年1回接種しますが、これはインフルエンザウイルスが変異し、また、防御効果が数ヵ月かけて弱まるためです。一方、風疹や麻疹などの他のワクチンでは、疾患からの防御が数年間、あるいは生涯にわたって持続することもあります。主要なウイルスタンパク質の突然変異は、ウイルス変異体の出現を意味します。SARS-CoV-2コロナウイルスは変異体を形成する変異を起こしやすく、その一部は世界の多くの地域で定着しています。科学界及び規制当局は、現行のワクチンが新たな変異体による感染から人々を保護し続けることができるか否かについて、非常に積極的な監視を行っています。
- 現在、多数のワクチン開発者がさまざまな変異型に対するワクチンを開発中であり、これらのワクチンの追加接種によって既知の変異型に対する防御能が高まる可能性があります。規制当局は、毎年新たな季節性インフルエンザワクチンを評価するのと同じように、変異体に対する免疫反応の評価に基づき、変異体に対するワクチンに関するデータの審査を円滑に進めることに同意しています。
Q:ワクチン候補が非常に多く存在する理由は何でしょうか?
A:パンデミックが世界的に深刻な影響を及ぼすことが急速に明らかになったことから、COVID-19に対する有効なワクチンの開発は、多くの製薬会社や医療研究機関の最優先事項となりました。また、ワクチン開発に対しては、政府及び民間セクターからかつてない巨額の投資も行われました。 現在、新しいワクチンを開発するためのさまざまな技術が確立されており、COVID-19ワクチンを開発する組織の多くには、これらの技術の1つ以上において固有の実績を有しています。上記の理由から、有効性、安全性又は製造上の課題が理由でいくつかのワクチンが承認されなかったとしても利用できるワクチンが確保されます。
Q:特定のCOVID-19ワクチンによって、多くの人に副反応がみられるようになった場合にはどうするのでしょうか?
A:注射部位の痛み、倦怠感、頭痛などの短期的な副反応は、どのCOVID-19ワクチンを接種した後にもよく見られます。これらの副反応は通常1~2日で消失します。特定の重篤な有害事象が特定のCOVID-19ワクチンに関連している可能性を示唆する新たなエビデンスが得られた場合、規制当局はグローバルな協力を通じて、その対策を講じるとともに、公衆衛生当局とも連携します。講じることができる措置の種類は有害事象の性質によって異なります。措置には、患者、医療従事者、地域社会に対して安全性についての警告を発すること、特定の患者(特定の合併症を有する患者など)における使用の禁忌を示すためにワクチンの製品情報又は一般向け情報を更新すること、特定の患者グループに対して有害事象の注意深い監視を行うこと、詳細が明らかになるまでワクチンの使用を一時的に停止することにより、特定のワクチンのバッチの出荷を防ぐことなど多岐にわたる内容が含まれます。
Q:規制当局はCOVID-19ワクチンの承認に要する時間をどのように短縮させていますか?
A:世界中の多くの規制当局が、安全性、品質及び有効性の厳格な基準を損なうことなく、COVID-19ワクチンに迅速にアクセスできる方法を導入しています。
- 一部の国々では、承認時に入手可能な限られたデータを評価する緊急使用許可(Emergency Use Authorisation)という方法を規定しています。国内に広がるパンデミックの状況下においてベネフィット対リスクを考慮した結果として、これらの国々では上記の規定の実行が重要とされます。 この経路、または承認ルートは国によって名前が異なるかもしれませんが、基本的に同じ原則に従っています。
- その他の国々では、迅速/優先承認制度や条件付き承認制度、暫定的承認制度が導入されています。
- 通常の状況では、規制当局による評価は承認申請に関わるすべての情報が得られた時点で開始されます。COVID-19ワクチンについては、データが入手できるようになり次第、いち早く評価できるようにするため、多くの規制当局が段階的な随時のデータ受け入れに合意しています。規制当局は、使用目的に対してワクチンの安全性、品質及び有効性を十分に裏付けるデータが得られた場合に限り、ワクチンに対する暫定的な承認を決定することができます。暫定的承認又は条件付き承認が得られた場合、治験依頼者は合意した期限内に、より包括的で長期的な臨床データ、安定性データ及びその他の情報を提出することが求められます。
Q:COVID-19ワクチンの承認は自国で行われたのでしょうか、それとも他国の承認に依存しているのでしょうか?
A:各ワクチンの承認申請データに関する規制上の評価については、ほとんどの国が独自で行っています。一方で、資源及び専門知識をより効率的に利用できるよう、各国の規制当局は、安全性、有効性及び品質に関するデータについて緊密に連絡を取り合い、技術的な問題が生じた場合はそれについて協議しています。多くの場合、WHOのGood Reliance Practicesの原則や協調メカニズムには、他の規制当局のアウトプットが活用されています。
Q:アストラゼネカやヤンセンのワクチンについて血小板数の低下を伴う極めてまれな血栓が臨床試験中に見つからなかったのはどうしてですか?
A:血小板減少症を伴う血栓塞栓症が起きるのは非常にまれです。自発的な報告の数に基づいた全発現率の推定値は接種100万回あたり約10〜15件です。これらのワクチンの臨床試験には多数の被験者が組み込まれていますが(ワクチン接種群は1万~2万人であることが多い)、この規模の試験でさえ、このような非常にまれに生じる事象が検出される可能性は統計的に低くなっています。こうしたことから、非常にまれな事象を検出し、さらなる調査を行うために、これらのワクチンの使用中に継続的な安全性監視が重要となります。
ICMRAについて
ICMRAは、WHOをオブザーバーとして、世界の各地域から30の医薬品規制当局*の長の集めた組織です。 医薬品規制当局は、ヒトの健康と福祉に不可欠な安全かつ有効な高品質の医薬品へのアクセスを促進するうえで、自らが重要な役割を担っていることを認識しています。 ワクチンのベネフィットがそのリスクを上回ることを保証することが含まれます
ICMRAは、世界の各地域の主要な規制当局からなる国際的な長官レベルの会合です。ICMRAは、医薬品規制当局に対しグローバルな戦略的フォーカスを提供するとともに、共有された規制上の事案及び課題に対して戦略的リーダーシップを発揮します。優先事項の一つとして、危機的状況に対する協調的な対応が挙げられます。
ICMRAのメンバーは次のとおりです:Therapeutic Goods Administration (TGA), Australia; National Health Surveillance (ANVISA), Brazil; Health Products and Food Branch, Health Canada (HPFB-HC), Canada; China National Medical Products Administration (NMPA), China; European Medicines Agency (EMA) and European Commission - Directorate General for Health and Food Safety (DG - SANTE), European Union; French National Agency for Medicines and Health Products Safety (ANSM), France; Paul-Ehrlich-Institute (PEI), Germany; Health Product Regulatory Authority (HPRA), Ireland; Italian Medicines Agency (AIFA), Italy; Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) and Pharmaceuticals and Medical Devices Agency (PMDA), Japan; Ministry of Food and Drug Safety (MFDS), Korea; Federal Commission for the Protection against Sanitary Risks (COFEPRIS), Mexico; Medicines Evaluation Board (MEB), Netherlands; Medsafe, Clinical Leadership, Protection & Regulation, Ministry of Health, New Zealand; National Agency for Food Drug Administration and Control (NAFDAC), Nigeria; Health Sciences Authority (HSA) Singapore; South African Health Products Regulatory Authority (SAHPRA), South Africa; Medical Products Agency, Sweden; Swissmedic, Switzerland; Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency (MHRA), United Kingdom; Food and Drug Administration (FDA), United States.
アソシエイトメンバーは次のとおりです:Argentina national Administration of Drugs, Foods and Medical Devices (ANMAT); Austrian Medicines and Medical Devices Agency (AGES), Colombia National Food and Drug Surveillance Institute (INVIMA); Cuba Center for State Control of Medicines, Equipment and Medical Devices (CECMED); Danish Medicines Agency (DKMA); Israel Ministry of Health (MOH); Poland Office of Registration of Medicinal Products and Biocidal Products (URPLWMiPB); Portugal National Authority of Medicines and Health Products (INFARMED); Russia Federal Service for Surveillance in Healthcare (Roszdravnadzor); Saudi Food and Drug Authority (SFDA); Spanish Agency of Medicines and Medical Devices (AEMPS).
世界保健機関(WHO)はICMRAのオブザーバーです。
COVID-19の対応におけるICMRAの役割を含め、ICMRAに関する最新情報については、http://www.icmra.infoを参照してください。
世界保健機関(WHO)について
世界保健機関(WHO)は、国連システム内の公衆衛生において世界の指導的役割を果たしています。WHOは1948年に設立され、健康を増進し、世界の安全を保ち、弱者に奉仕するため、6つの地域にまたがり、149の事務所を置いて、194の加盟国と協力しています。2019~2023年の私たちの目標は、さらに10億人を超える人々にユニバーサル・ヘルス・カバレッジがいきわたるようにし、さらに10億人を超える人々を公衆衛生上の緊急事態から保護し、さらに10億人を超える人々に健康と福祉の向上をもたらすことです。
コロナウイルスから身を守るためのCOVID-19に関する最新情報や公衆衛生に関するアドバイスについては、www.who.intにアクセスし、Twitter、Facebook、Instagram、LinkedIn、TikTok、Pinterest、Snapchat、YouTube、TwitchのWHOのアカウントをフォローしてください。